複数の肩書を、ひとりの視線で束ねる。ブランディング・デザイナー・市山光一
〈oneberg〉代表・市山光一は、ブランディングの仕事と並行して、世界の写真賞に名前を刻むフォトグラファーでもある。IPA 2024金賞、ハッセルブラッド、MINIクラブマンのフルカスタム、そしてオリジナルソフビ「キャメランロボ」——肩書の多さの正体は、細部への偏愛だった。

大阪・南堀江を拠点に〈oneberg〉を率いる市山光一(Koichi Ichiyama)。アートディレクター、Webディレクター、グラフィックデザイナー、フィルムディレクター、フォトグラファー——プロフィールに並ぶ言葉は、飾りではない。
2021年11月、ワンベルク株式会社(oneberg inc.)を設立してから、彼の仕事は「ブランディングを軸に、あらゆるクリエイティブを組み合わせる」という方針で一貫している。御用聞きにならず、リサーチと客観的な視点から本当に必要なものを提案する。
けれど、彼を語るうえで見落とせないのが、クライアントワークの外側にある「個人的な制作」だ。カメラ、クルマ、ソフビ——どれも、デザイナーとしての視線がそのまま注がれている。
IPA 2024——〈Transience of Larung Gar〉が金賞
International Photography Awards 2024、Professional部門。
市山は、Professional - Special / Travel・Wanderlust 部門で1st PRIZE(金賞)を受賞した。受賞作は〈Transience of Larung Gar〉。標高4,000メートルに広がるラルンガル僧院の赤と金の集落——かつて数千の僧侶が暮らした聖地が、無常の風に静かに姿を変えていく瞬間を写した一枚だ。
撮影日は2017年5月2日。技術データは1/800秒、f/6、ISO 200、フルフレーム。公式サイトのキャプションには、こうある。「過去と現在、静寂と変化が共存する凍りついた一瞬」。宗教的空間の荘厳さと、外部の圧力によって形を変えていく現実が、同じ画面の中に静かに重なっている。
受賞のクレジットには oneberg inc. と記されている。デザイン会社の代表でありながら、国際的な写真コンテストの頂点に立つ——彼の「撮る」という行為は、趣味の延長ではない。
その境界線は、撮影だけにとどまらない。MINI F54(クラブマン)のフルカスタムも、同じ論理だ。「MINIのカスタムやりきった」とInstagramで宣言した愛車のベースカラーは、街で見かけて一目惚れしたフォルクスワーゲン〈The Beetle Dune〉のサンドストームイエローメタリック。アクセントにはジャガーのローマンブロンズ——天井、ミラー、フェンダーを塗り分け、ピラーはクロームメッキのラッピング。クラシック感を出すためワイパーをメッキ加工し、天井下にメッキのモールを一周貼った。
ホイールは〈DEAN〉のCROSS COUNTRYを塗装。ウォッシャーノズルやアンテナカバーまでメッキに。内装はアクセントカラーで統一し、ステアリングは〈REAL〉のオールウッド。「機材もいっぱい乗るし、バック紙とかも2mくらいなら行けるし、目が丸くて最高すぎるので壊れるまで乗る」。塗装・カスタムは〈POINT-K2〉に依頼した。クルマは移動手段ではなく、デザインの延長線上にある。


ハッセルブラッドという器
市山が愛用するのは《Hasselblad》。〈907X〉と〈CFV 100C〉を組み合わせたボディに、〈XCD 2,5/90V〉——予約してから四ヶ月、ようやく手元に届いたというレンズのシャッター音は「気持ち良すぎる」と本人が語る。
「これでハッセルレンズ一通り揃ったのでもう買わない(たぶん)」——フォトグラファーあるあるの言葉だが、彼の場合は半分本気で、半分は次の偏愛がすでに動いている予感でもある。
旅先では〈X2D II 100C〉と〈XCD 28P〉を携え、ワンダーラストの衝動をそのままフレームに落とす。ベトナム・ハノイの「Train Street」——線路のすぐ脇で暮らす人々の日常を、夕方の光が黄色い日よけを照らすなか、線路の先へ人が歩いていく構図で切り取った。旅の写真でありながら、トーンと構図にはグラフィックデザイナー特有の計算が感じられる。
メディアムフォーマットの解像感と、デザイナーとしての視線——その交差点から生まれた一枚々が、IPAのTravel・Wanderlust部門を制した。撮影のトーンは、そのままクライアントのブランド写真にも還元されていく。


キャメランロボ——カメラのオリジナルソフビ
いま制作中なのが、オリジナルソフビ「キャメランロボ」。原型制作に一年をかけ、ようやく完成したという。
レンズを交換できたり、外すと中に……というギミックを色々詰め込んだ、カメラとロボットの境界にある玩具だ。年内発売を目指し、デザフェスのようなイベントに並べるのが一旦の目標。
デザイナーがクライアントのブランドを造るように、彼は自分の偏愛をソフビという形に落とし込んでいる。撮る・塗る・造る——三つの動詞が、ひとつの人物像をつくっている。

〈oneberg〉と、Instagramの断片
仕事としての〈oneberg〉は、ロゴからWeb、撮影、映像までを束ねるブランディング会社。2023年11月、〈BRANDING AGENT INC.〉のWebサイトがAwwwards Honorable Mentionを受賞した実績もある。
個人のInstagram(@ichi_ama51)のリールには、上記のような制作過程が短い尺で蓄積されている。受賞の報告、MINIの仕上がり、レンズの開封、ソフビの進捗——完成品だけでなく、そこに至る温度がログとして残されている。
フォローすればわかる。彼が何に目を止め、何に手を動かし、何を「やりきった」と言うのか。紹介記事の結びとして、それ以上に適切な案内はない。
PROFILE
市山 光一(Koichi Ichiyama)
代表取締役|アートディレクター・フォトグラファー|〈oneberg〉
2021年11月、ワンベルク株式会社(oneberg inc.)を大阪・南堀江に設立。ブランディングを軸にグラフィック、Web、写真、映像を手がける。International Photography Awards 2024 Professional部門 1st PRIZE(〈Transience of Larung Gar〉)。Instagram @ichi_ama51。Hasselbladユーザー。オリジナルソフビ「キャメランロボ」制作中。