宇宙の果ての生き物を、布に描く。大分・日田の画家・NORIKO

布地にペンで描く、架空の生き物——昆虫でも鳥でも爬虫類でもない、地球のはるか彼方の惑星にいるような存在。大分県日田市でアトリエを構える画家・NORIKO。銀座、パリ、森のなかへ。想像上の世界を描き続ける軌跡をたどる。

大分県日田市小迫町。自宅兼アトリエ「アトリエNORIKO」を主宰する画家・NORIKO(小野紀子)。布地にペンで描く、白黒の想像生物——それが、いま彼女を知る入口になっている。

作品の主役は、地球上には存在しない生き物たちだ。昆虫のようでも、鳥のようでも、爬虫類のようでもある。だがどれとも言い切れない。宇宙の果ての惑星に棲んでいるような、空想上の存在として描かれる。

大分大学教育学部美術科を卒業。行動美術新人選抜展(東京都美術館)への出品をはじめ、日韓現代絵画交流展、日田市ギャラリーでの個展など、九州を拠点に活動を重ねてきた。かつては行動展などにも出品していたが、近年は出品を控え、個展や地域の展示に重心を置いている。

想像生物と、布の上のペン画

一匹一匹に、まなざしがある。

NORIKOの絵は、布地に描かれたペン画が中心だ。細い線が重なり、点や模様が体に宿る。黒と白——色数は限られているが、生物の輪郭と質感は驚くほど緻密だ。

「跳べイカロス」「海の女王」「Mr.マリン」——海底に浮かぶ女王や、心を盗んで逃げていく猫のような生き物。タイトルからも、物語の入口が見える。西日本新聞の取材では、NORIKOはこう語っている——描いた生き物一匹一匹の「まなざし」を、見る人に感じてほしい、と。

想像上の世界や惑星を舞台に、空想と架空の生き物を描く。写実でも抽象でもない、第三の生き物学。日田の森や庭に作品を吊るし、風に揺れる布の上で、彼らは静かに存在を主張する。

模様の入った想像上の爬虫類のペン画
布地・キャンバスに描かれた想像生物のペン画
布地に描かれた目と昆虫のような線画
布地へのペン画——細部の線と質感

彼方よりのまなざし——銀座、パリへ

2019年、東京・銀座の長谷川画廊で個展を開いた。2024年11月には同画廊で「彼方よりのまなざし NORIKO展」——想像生物を描いたペン画30点を発表。案内状に描かれた「跳べイカロス」が、来場者の目に最初に触れる一作だった。

海外では、フランス・パリのギャラリー・サトリッテで「惑星の風景」を開催。2020年の初回は新型コロナウイルスの影響で作品のみを送り、2023年秋の再開催で初めて本人が会場に立った——パリでの本格的な個展になった。

日田でも、パリ個展で発表した作品を「-惑星の風景-」としてアラスカンカフェに展示。東京とパリ、日田の森——場所は変わっても、描く対象は変わらない。宇宙の果てから、こちらを見つめている生き物たちだ。

苔むした石段に並べられた小さな絵画
自然のなかに置かれた作品——日田のアトリエ周辺

森のおく、ガダルのすみか

2006年、絵本『森のおくガダルのすみか』を出版した。ガダル——魚のような、森の奥にすむ想像上の生き物。NORIKOの世界観は、絵本のページにもそのまま流れ込んでいる。

公式サイト gadaru.com には、Portfolio、Event、Discographyが並ぶ。布地のペン画、インスタレーション、絵本——媒体は違っても、描くのは同じ宇宙の生き物たちだ。森に吊るされた布、野に立つパネル、小さなキャンバス。自然と作品が境界なく混ざり合う展示のあり方も、彼女らしい。

のちに絵本『MOON』も刊行。日田市ギャラリー独楽での「ジャズを聴きながら」イラスト展、クンチョウ酒造の焼酎パッケージデザインなど、地域とつながる仕事も続けている。

野原に立つ三連パネル——跳べる魚のペン画
野原に立つパネル——ガダルの世界
日本庭園に置かれた青い額の絵画
庭園に置かれた作品——自然と作品の境界

アトリエNORIKOと、ARTごっこ

1999年から、こども絵画教室「ARTごっこ」を主宰している。保育園や学校でも絵画講師を務め、夏には子ども向けワークショップ、日田市天領祭りや技能祭でも制作イベントを開く。

2007年からは自宅アトリエで「アトリエNORIKOにようこそ」を毎年開催。日田市ギャラリー連でのARTごっこ作品展も続いている。子どもたちと描く時間と、一人で布に線を引く時間——どちらも、想像の世界を広げる営みだ。

大分県美術協会会員。日韓現代絵画交流展、森のアート展でのインスタレーションなど——キャリアは長いが、いまのNORIKOを語るうえで中心にあるのは、布地の上の想像生物と、その奥にある「まなざし」だ。

NORIKOがアトリエでペン画を描く様子
アトリエNORIKO——布地に線を引く

PROFILE

NORIKO

画家|アトリエNORIKO / こども絵画教室 ARTごっこ 主宰

大分県日田市在住。大分大学教育学部美術科卒。布地にペンで描く想像生物で知られる。絵本『森のおくガダルのすみか』『MOON』。銀座・長谷川画廊、パリ・ギャラリー・サトリッテでの個展。大分県美術協会会員。

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